嘘も方便

前回の日記で父が登場し、その私の父に好意的なコメントを頂いたので、
では母も…と思い、母との最近のエピソードを思い返してみましたが、
無趣味でつまらない人だった、...と言う事しか出てきません(苦笑)

 

(という事は…私は父親似なのかしら?
これって自画自賛?それとも自爆?:笑)

 

母親と言えば…お仕事の話になってしまいますが、
東京に居た時から、ご注文を頂いていいお客様のお母様の事を思い出しました。

 

今は認知症を煩われていらっしゃいますが、
発病以前は、私と同様に生け花の先生を長年なさっていた方です。
元々は、お母様がお客様で 私のデザインを気に入ってくださっていました。
お好みのテイストは、渋めのお色味だったり シックな感じで…。
生け花の世界で、多くの生徒さんを持っていらっしゃる方なのに、
常に腰が低く
「高宮さんからは学ぶ事が、沢山あるわ。」
とおっしゃって喜んでくださっていました。
ですので私も
‘ 実るほど頭を垂れる稲穂かな ’ 精神 を
忘れず謙虚さを大切にせねば、
と毎度毎度、戒めさせて頂いておりました。
そのお母様が認知症を発症なされてからは、娘さんからのご注文に変わり、

数年後、娘さんがこんな事を私に話し出しました。

 

娘さん:「母は花の扱い や、花の事に対し、厳しかったからなのか、傲慢な人で、
子供の頃から愛されている と言う感覚は無く、私は母の事が嫌いでした。

ですから認知症を患っている母をも疎ましく思って面倒を看ているんです。」

 

高宮:「そうですか…お花に対しては私もプロとして真剣に向き合ってしまうので
お母様が、厳しく細くなってしまう気持ちは、よくわかります。
花への愛情は確かでしょうが、それ以上に娘さんの事も愛しているはずですよ(^.^)
しかし…ご看病、大変ですね…」

 

娘さん:「そうなんです!母の病状は日に日に悪化していて、
今はもう、娘である私の名前 も忘れているのに

高宮さんのお名前と作って頂いたアレンジメントは、記憶の中に残っているようです。

 

なので私が、制作して頂いたアレンジメントのお花に
水をあげたりお世話をしている姿  からなのか
私の事を母は、どうやら高宮さんと勘違いをし、お花の事を沢山話しかけてきます。

 

その時の母の表情が、豊か と言うか、とても穏やかな表情で、
私が子供の時に見た母の表情 以来の顔、と言うか…うまく言葉が出てこなくてすみません。

 

母の笑顔を見ていたら、自然と涙がこぼれたりと…。

 

 でもこれだけは最近はっきりと言えるのですが、
『花を間に挟んで母を許せている自分もいる』んです。

 

そんな母を憎んでいた以前の自分が、悔しくて仕方がないんです。
私、本当はお母さんの事が大好きなのに!お母さんごめんなさい…。

 

高宮さん、母の人生の残りの時間を穏やかな物にしたいので、
母が逝く迄このまま高宮さんのお名前を私に貸して頂けませんか。

お花と高宮さんのお名前が、
こんなに母の病状を和らげるかのような
母の表情も変えてしまうなんて…

 

母が昔から花にとてもこだわっていたのも今更ながらわかりました。」と…娘さんは涙ぐんだ顔で私に
胸の内を吐き出すかの様にお話ししてくださいました。

 

もちろん私は「こんな私でもお役に立つのなら」と 快く承諾をさせて頂きました。

 

 娘さんの『親子の絆を壊したくない』と言う強いお気持ちと
闘病介護中の親子へ癒しを与えているお花の力!

まさにお花とは、ご注文なさる方・作る者・送られる方、
それぞれの思いをひとつにつなぐ素晴らしい物なんですね。

 

あの麗婦人(お母様)の穏やかな笑顔が、容易に想像出来て私も幸せな気持ちになりました。